感染性胃腸炎とは、ウィルス、細菌、寄生虫などに感染することによって引き起こされる胃腸炎の総称です。
主に口から体内に菌が入ることで発症しますが、物から人だけでなく、人から人への感染もあります。集団で同じ菌により発症することも多く、流行期には注意が必要です。感染性胃腸炎の疑いがあったら自宅で療養し、学校や会社など人が多く集まる場所にでるのは控えましょう。
下痢と嘔吐で水分が失われるので、脱水症には厳重な注意が必要になります。特に乳幼児や高齢者は、経口投与が無理なら点滴治療も考えましょう。
感染性胃腸炎の代表的なもの
感染する胃腸炎というのは、悪いものを食べてなる単なる胃腸炎とは異なります。原因となるウィルスや細菌がたくさんあって、それによって症状の違い、予防法なども異なるのです。
下痢や嘔吐はどんなものが原因でもでる症状なので、なにが原因なのか自己判断は難しいものです。ほとんどの感染性胃腸炎は、体内から菌を出し切ってしまえば自然に治癒しますが、場合によっては重篤化するものもあります。症状がひどいようなら、病院を受診しましょう。
○感染性胃腸炎の原因ウィルス
・ロタウィルス
乳幼児がかかると重症化しやすいウィルスです。激しい嘔吐と下痢が続きます。便が白色に近い色になることもあります。感染力も高いので、保育園などで集団感染することがよくあります。排泄物の処理には注意してください。大人も感染しますので、家のトイレや使用済みおむつの始末など、衛生面を徹底する必要があります。
予防するには、乳児期にワクチンを接種することです。2回タイプと3回タイプがありますが、2回タイプで生後半年、3回タイプは生後8か月以内に接種を終えます。
ワクチンは高額ではありますが、後にロタウィルスに感染した場合を考えてみましょう。保護者は数日つききりで看護しなければいけません。排泄物の処置、家中の消毒に追われることになります。しかもかかった子供はひどい下痢と嘔吐に悩まされるのです。ウィルスの接種でそれらが予防できるのですから、ぜひ活用すべきです。
・ノロウィルス
冬になると必ず集団感染のニュースが流れるほど、感染力の強いウィルスです。排泄物や吐瀉物の飛沫から感染するので、集団感染が多くなるのです。
厄介なことに飛沫が乾燥し、それが空中に浮遊するようになっての空気感染もあることです。専用の消毒液など市販されていますから、衛生のための処置をしっかりやりましょう。
○感染性胃腸炎の原因細菌
・カンピロバクター
生肉に付着している細菌なので、調理のときは注意しましょう。肉を切ったまな板を、よく消毒しないで生野菜など調理すると感染します。夏場に多く、ひどい下痢が数日続きます。キャンプなどで料理するときは、生肉はよく火をとおすようにしましょう。
またペットから感染することもあるので、いくら可愛くても猫や犬と直接のキスは控えたほうがいいです。動物園などで動物に触れたあとは、必ず石鹸で手洗いし、アルコール消毒をおすすめします。
・サルモネラ菌
家畜、牛や豚、鶏などの糞便内にある菌です。不衛生な状態だと、ネズミやゴキブリ、ハエなどが菌を運んでくることがあります。
日本で市販されている鶏卵は、洗浄が十分にされているので生卵として食べても安心ですが、海外では生で食べることはおすすめできません。サルモネラ菌が付着していることがあるからです。
肉や卵などは加熱調理すれば、感染は防げます。井戸水が感染源になることもありますから、夏場は煮沸したものを飲むようにしてください。
・黄色ブドウ球菌
日常生活のなかにあふれている菌です。人の髪や肌にも付着しています。繁殖したときに毒素が出ますが、これが下痢や嘔吐を引き起こします。
調理者が手に傷を負っていたりすると、その部分で繁殖した黄色ブドウ球菌が付着して、感染することになります。少しでも疑わしい傷があるなら、調理者は料理用のビニール手袋などを必ず着用しましょう。
・病原性大腸菌
大腸菌は悪玉菌の1つではありますが、特別な害をもたらすものではありません。その中でも病原性大腸菌(組織侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌)だけは、感染すると重篤化するほどの腸炎を引き起こします。
代表的なのが腸管出血性大腸菌のO-157でしょう。感染力が強く、症状も重くなるので、乳幼児や高齢者は特に注意が必要です。
○感染性胃腸炎の原因寄生虫
・クリプトスポリジウム
体内で増殖すると下痢や嘔吐の症状がでます。宿主の糞便から広がっていくものなので、排泄物の処理に注意します。煮沸するのが一番の予防なので、生水には注意が必要です。
・アメーバ赤痢
大腸に感染するだけでなく、肝臓にも感染する可能性があります。人の糞便から感染するので、衛生状態のよくない国にでかけたときには、特に注意する必要があります。
・ランブル鞭毛虫(ランブルべんもうちゅう)
こちらも糞便で感染します。自然の水、河川や池などにいたものが感染源です。川遊びをしたときに、水を飲んでしまったときなどは注意してください。治療開始後、寄生虫が完全に体内にいなくなるまで6週間もかかります。
感染性胃腸炎を避けるには
代表的なものだけでも、感染性胃腸炎の原因となるものはこんなにあります。これらの原因ウィルスや菌を避けて暮らすことは不可能です。けれど1度でも感染すれば、下痢や嘔吐で苦しむことになるので、できれば避けたいものです。
衛生という概念を、日本人は昔から身につけていました。こまめに掃除や洗濯をし、キッチンをきれいに保つことは今でも行われています。それだけでも感染の機会は減るでしょう。消毒用の製品が市販されていますから、ぜひ活用してください。
さらにやっておきたいことは、感染しても症状が軽くなるように、腸内環境を整えておくことです。下痢や嘔吐で荒れてしまった腸には、すぐにラクトフェリンや乳酸菌を補充しましょう。