ストレスからなる胃潰瘍はよく知られていますが、腸にも潰瘍ができることはあまり知られていないようです。
腸の潰瘍は小腸にも大腸にもできますが、1度できるとかなり厄介な病といえます。ではどのような病なのか、調べていきましょう。
潰瘍の原因となる病気
潰瘍とは病気が原因でただれた粘膜や皮膚の表面が、炎症を起こしてくずれた状態を言います。眼の角膜,消化管,血管にできやすいのですが、特に胃腸にできたものは、穴を開けるほど重症化することがあります。
原因となる病気は重症化するようなものが多いので、かからないように注意してください。
○腸結核
結核菌が肺ではなく消化管に貼り付いて、潰瘍の原因となります。肺結核は根絶されたように思われていますが、現在でも結核菌は存在するのです。高齢者、糖尿病患者などの、自己免疫力の落ちた人は要注意です。
薬を投与されての半年間ほどの治療が必要になりますが、完治するまで薬は飲み続けます。胃腸に感染した結核菌は、感染力はそれほどありません。
○赤痢
赤痢菌に汚染された食べ物を食べたことでかかります。特に熱帯地方などに海外旅行をしたときには、食べ物に十分注意してください。日本国内でも油断はできません。国内での感染例があります。
細菌性赤痢は、感染症法という法律で3類感染症に指定されています。病院で赤痢の診断が下されたら、保健所の調査には快く応じてください。
○腸チフス
日本では少ない病気ですが、発展途上国などでは今でもよくある病気です。腸のリンパ節に菌が入り込み、潰瘍となります。ひどくなると腸に穴が開くこともあります。
この病気も3類感染症に指定されています。感染したら、手指の消毒をまめにして、消化のいい食事をして安静に過ごしてください。完治するまで薬は飲み続けます。症状が軽減したからと薬をやめてしまうと、生涯保菌者になってしまいますから、注意が必要です。
○ベーチェット病
ベーチェット病は、眼や皮膚粘膜に炎症発作を起こす、原因不明の病気です。腸で発病すると、腹痛、下血、便の異常が症状としてあらわれます。
このベーチェット病には、全身のいたるところで症状が現れるという厄介な面があります。口腔内の口内炎、目の症状、関節炎、外陰部潰瘍、血管病変など、さまざまな症状の原因となっています。
消化管で症状がでた場合は、腸に穴が開く(穿孔)になったりするので、手術による治療が必要になる場合があります。
○潰瘍性大腸炎
以前は少なかったのですが、近年は増えてきている病気です。20代の若い世代で発病することが多いのですが、完治することは難しく、生涯投薬が必要になります。
直腸から大腸に潰瘍が広がり、下血と下痢、ひどい腹痛といった症状がでます。現在、完治させるような特効薬はありませんが、症状に合わせた投薬で進行を抑えることは可能です。ひどくなった場合は、大腸全摘手術になることもあります。
原因はいまだにはっきりしない難病の1つです。しばらくよい状態が続いて寛解したのかと思うと、何年かして再発することもあります。
穿孔を放置したりしない限り、この病気が直接死因になることはあまりありません。ただ長年再発を繰り返しいると、腸の潰瘍部分がガン化して大腸ガンになる危険性があります。
腸に潰瘍ができたら気を付けること
潰瘍ができると、下血や下痢、腹痛などの症状がでます。病院で受診して、原因はなにかをしっかり調べてもらいましょう。同じような症状でも、原因の病気によって投薬の内容が大きく違ってくるからです。
素人判断で勝手に単なる胃腸炎だと決めつけてはいけません。市販の整腸剤だけで治そうとしているうちに、腸に穿孔ができてしまうようなことも考えられます。
潰瘍ができたら、以後は食生活に気を付けます。刺激の強いもの、高脂肪のもの、大量の飲酒は控えましょう。
病気になる前の食生活を見直すことも大切です。偏った食生活が、腸を弱らせていたのかもしれません。潰瘍が投薬処置などで落ち着いてきたら、改めて腸内環境を見直してはいかがでしょうか。
潰瘍ができるような腸には、善玉菌が多数必要です。抗菌作用があり、善玉菌を助けるラクトフェリンなどを飲むことによって、潰瘍から腸を守ってください。
腸潰瘍のまとめ
日本でも食中毒になることはありますが、海外旅行先ではさらなる注意が必要です。厨房が不衛生だったり、よく火が通っていない料理は気を付けましょう。生水を飲まないようにと注意されますが、ドリンク類に入っている氷も注意が必要です。
衛生基準が緩いだけでなく、海外には今でも赤痢やチフスが存在するのです。きれいすぎる環境にいる私たち日本人は、抵抗力が少ないので用心しましょう。
腸に潰瘍ができるような病気は、完治するまでかなりの日数がかかります。潰瘍性大腸炎のように生涯つきあうことになってしまうものもあるのです。予防するには潰瘍ができる前に、食生活を見直し、腸内環境を常に整え、悪玉菌を増やさないようにしていくしかありません。