1キロのお砂糖の袋を手にしてみてください。ずっしりとした重みを感じると思います。これと同じ重さ、場合によってはさらにもう1袋分の量の腸内細菌が、あなたの体内にあると知ったらどう思われますか?
腸内フローラとも呼ばれる腸内の細菌群、種類は数百あり1000兆個近くの細菌があるのです。これらの重さが約1キロから2キロになります。
細菌群は、体を整える善玉菌、体調を悪くする悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌の3種類に分かれています。さらにその善玉菌の中でも、何百という種類があり、それぞれが健康のために働いてくれています。
人は母親の胎内にいるときは、これら腸内細菌とは無縁です。それが誕生と同時に、さまざまな細菌が体内に入ってきて、自分なりの腸内フローラを形成していくのです。最初に体内にすみつくのは母乳によって運ばれてきたビフィズス菌、代表的な善玉菌として知られています。
善玉菌の役割
善玉といわれても、どのようないいことをしてくれているのか、わかりにくいと思います。目で見て効果を確かめることは、腸内細菌にはできません。では善玉菌は、どのように働いているのでしょうか。
○腸内を弱酸性に整える
代表的な善玉菌と、それらが生み出す酸の種類です。
・乳酸菌 乳酸
・ビフィズス菌 乳酸と酢酸
・ルミノコッカス、コプロコッカス 酢酸と酪酸
これらの酸によって腸内は弱酸性に保たれ、悪玉菌が繁殖しづらい環境に整えています。さらに病原菌やウィルスなども、弱酸性の腸内ではとどまりづらく、病気の元を寄せ付けない体にしてくれるのです。
○ビタミンを作る
食事から栄養をとった善玉菌は、腸内でビタミンB群を作りだします。これらのビタミン群は、人の身体活動にとって欠かせないものです。ビタミン剤を服用してビタミン補給をするのもいいですが、善玉菌が活発なら体内で十分なビタミンを作り出すことが可能になります。
○ドーパミン、セロトニンを生み出す
人の意欲を生み出すドーパミン、心の安定をもたらしてくれるセロトニン、これらの神経伝達物質を生み出すのも善玉菌の役割です。ストレスによって悪玉菌が増えると、これらの幸福神経伝達物質も少なくなり、鬱状態を引き起こしたりするのです。
○食物繊維を分解して腸の動きを活性化
食物繊維は、胃の消化液だけでは完全に消化されません。食物繊維の消化を助ける酵素は、善玉菌によって生み出されます。ほどよく消化した食物繊維は、他の老廃物をからめとって排泄をうながします。
善玉菌によってほどよくできあがった便は、腸の蠕動によって運ばれていきます。この蠕動が活発でないと、便は大腸から直腸へと運ばれていけなくて便秘になってしまいます。
善玉菌が活躍できるように、食物繊維をきちんととりましょう。野菜や海藻、精白されていない穀類などに食物繊維は豊富に含まれています。
善玉菌を増やすには
腸内フローラの割合は、善玉菌が2割、悪玉菌が1割、日和見菌が7割というのが理想です。けれど食生活の乱れで、この割合がくずれてしまうことも多々あります。そんなときに善玉菌を増やすには、どうしたらいいのでしょうか。
○乳酸菌などの食品で増やす
腸内フローラは約3日ほどで菌が入れ替わります。暴飲暴食をして悪玉菌が増えていても、せっせと善玉菌の助けになるものを体内にとりいれれば、数日で元の状態に戻れるのです。
善玉菌の大好物は乳酸菌です。ドリンクタイプ、ヨーグルトタイプ、サプリメントだけでなく、最近では乳酸菌入りのチョコレートまで登場しました。どんな形であれ、まめに乳酸菌を補給しましょう。それによって善玉菌は増えていきます。
発酵食品には乳酸菌が含まれているので、積極的にメニューにとりいれましょう。キムチ、ぬか漬け、チーズ、納豆などが発酵食品です。
毎日、なにか1つの乳酸菌食品か発酵食品をメニューに取り入れれば、腸内環境が大きく乱れることはないでしょう。ただ乳酸菌をとっているからと安心して、加工食品ばかりを大量にとっては意味がありません。
○オリゴ糖は善玉菌の栄養
オリゴ糖はそれだけでも販売されていますが、果物や野菜、豆などにも豊富に含まれています。乳酸菌同様、オリゴ糖は善玉菌の大好物ですから、ぜひ毎日とるようにしてください。良質なハチミツにもオリゴ糖はかなり含まれていますので、砂糖のかわりにハチミツを利用するのもいいでしょう。
○悪玉菌を退治するラクトフェリン
母乳の成分でもあるラクトフェリンは、これまでは熱に弱くて体内に取り入れることが難しいものでした。それが研究も進み、腸にまで達することができるようになりました。
ラクトフェリンが善玉菌のために役立つのは、悪玉菌をやっつける力があることです。ラクトフェリンは、腸で胆汁酸と結合することができます。この結合物が、悪玉菌ができることを防ぐ力になるのです。
悪玉菌の力が弱くなってくると、日和見菌も味方してくれて善玉菌の勢いが復活します。乳酸菌やビフィズス菌ではやっつけられなかった悪玉菌も、ラクトフェリンの助けを借りれば排除できるのです。